事務所ニュース:No.92 2023年10月20日発行
ハラスメント防止措置が全企業に義務付けられています!
弁護士 山田 聡美
職場における各種ハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であり、働く人の能力を十分に発揮することの妨げにもなるものです。この対策は、現在全事業主に義務付けられています。
1 パワハラとは
職場における優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で労働者の就業環境が害されるものをいいます。
暴行など身体的な攻撃はもちろん、精神的な攻撃(人格を否定するような言動、必要以上に長時間厳しく叱責を繰り返すなど)や人間関係からの切り離し(気に入らない労働者について仕事を外したり、集団で無視して孤立させるなど)なども含みます。
2 セクハラとは
職場における、意に反する性的な言動で就業環境が害されること(環境型)、あるいは性的な言動への対応により労働者が労働条件について不利益を受けること(対価型)をいいます。
職場で上司から身体を触られて苦痛で仕事に集中できない場合(環境型)や、上司からの性的な関係を求められ、これを断ると解雇されたなどという場合(対価)が含まれます。
3 事業主としての必要な防止措置
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
まずは、各種ハラスメントが許されないのだという姿勢・方針の明確化と周知が求められます。
②相談(苦情を含む)に適切に対応するために必要な体制の整備
さらに、相談窓口を設置し周知するなど、相談体制を確立することが必要です。
③事後の迅速かつ適切な対応
ハラスメントが起きてしまったら、速やかに事実関係を確認し、確認ができた場合には、被害者への必要で適切な配慮と行為者に対する必要な措置を適正に行い、さらに再発防止に向けた措置を講じることが求められます。
誰もが働きやすい職場づくりのため、ぜひ一緒に考えていきましょう。
コラム:相続土地国庫帰属制度
弁護士 小林 容子
今年4月27日から、相続等で取得した不要な土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度が始まりました。これは、所有者不明や、管理されないまま放置された土地が増えることを防止しようというものです。
相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人が申請することができ、この制度が始まる前に相続等によって取得した土地についても対象となります。しかし、相続等で取得した土地であればどのような土地であっても国に引きとってもらえるというわけではなく、建物が建っていたり、担保権や利用権が設定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地などはそもそも申請をすることができません。そして、申請をしても、通常の管理・処分に過分な費用や労力がかかる土地は受け取ってもらえません。
申し立ては、その土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)に、審査手数料分の印紙を貼って申請します。その後審査がされ、承認されて国庫に帰属することとなれば、一定の負担金(その土地の管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して決定)を支払って、国庫に帰属します。この制度の利用を検討するのであれば、弁護士や法務局に相談すると良いでしょう。