インターネット上の名誉毀損
- インターネットを見ていたら、とある掲示板で、私の実名をあげて、全く身に覚えのないことを書き連ね、私のことを侮辱するような書き込みを発見しました。誰が書き込んだのがはわかりませんが、ネット上で私に関する嘘の噂が広まるのは耐えられません。どうしたらよいでしょうか。
- インターネット上の名誉毀損の場合でも、採りうる法的手段は、基本的には通常の名誉毀損の場合と同じです。つまり、名誉毀損表現をした本人に対し、その表現をやめるように請求し、やめない場合はその表現の差止や、場合によっては名誉毀損を理由に損害賠償を請求していくことになります。
ただし、インターネット上の名誉毀損表現の最大の特徴は、その匿名性です。つまり、このような書き込みをする人(発信者)は、本名を名乗ることはほとんどなく、通常「ハンドルネーム」というあだ名のようなものを使います。そのため、加害者を特定することができないのです。そこで、掲示板の管理人やプロバイダーに対し、発信者が誰であるか、情報を開示するよう請求するという方法が考えられます。2002年から施行されたいわゆる「プロバイダー責任制限法」は、4条1項で、一定の要件のもと、プロバイダーや管理人が発信者の情報を開示しなければならないと定めています。この法律を根拠に、管理人などに、当該書き込みをしたのが誰であるのか教えるように請求することができるのです。その上で、発信者に対し削除の要求や損害賠償請求をすることになります。
ただし、発信者に対する請求は、このようにプロバイダー等に対する開示請求を経なければならず時間も手間もかかります。そこで、もう一つの方法として、プロバイダーや掲示板の管理人等に対し書き込みの削除や損害賠償を請求する方法があります。
プロバイダー責任制限法は3条1項で、プロバイダーや管理人は「他人の権利が侵害されていることを知ったとき」または「知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」にしか 損害賠償責任を負わないと定めています。逆に言えば、そのような場合に該当するのであれば、プロバイターや管理人に対する損害賠償請求が認められる場合があるとしているのです。また、幾つかの下級審判例では、掲示板上で名誉毀損表現が書き込まれた場合、一定の場合に掲示板の管理人にその書き込みの削除義務が生ずることを認めています。したがって、これらの判例を根拠に、プロバイダー等に記事の削除を請求するという方法を採ることもできます。
以上の各請求ついて、もちろん裁判に訴えることもできますが、プロバイダー等との交渉で解決する場合も少なくありません。最良の解決策は、事件によって、相手方によって異なります。是非、弁護士に相談されることをお勧めします。
このQ&Aは、過去の相談をもとに掲載しています。題名横の日付の時点での回答ですので、その後の法改正などにより、現在は内容が変わっている場合もありますので、ご了承下さい。