更新料特約は有効か!?
- 私は、自宅アパートを2年間の契約期間で借りています。大家さんとの間の賃貸借契約には、この契約期間が満了して賃貸借契約を更新する場合には、賃料の2ヶ月分を更新料として支払うという文言が記載されています。このような更新料を支払う旨の約束は法的に有効なのでしょうか? また、この約束が有効であるとして、私がこの約束に反して更新料を支払わなかった場合、直ちにアパートを出ていかなければいけないのでしょうか。
- 更新料とは、一般に、土地、建物の賃貸借契約が更新される際に、家賃とは別に更新の対価として大家さんに支払われる金銭のことを言います。アパートやマンションなどを借りる際、賃貸借契約書には通常契約期間が定められており、契約期間が満了して契約を更新する場合には、大家さんに更新料を支払う旨の特約が規定されていることが多いです。このような更新料を支払う旨の特約は法的に有効と言えるでしょうか。
近時、いくつかの地方裁判所や高等裁判所で、この更新料の特約が消費者契約法10条に違反して無効であるという判決が出されていました。消費者契約法10条は、「民法、商法(…)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」と規定されています。
たとえば、京都地裁平成21年7月23日判決は、賃貸借契約締結時に更新料条項の趣旨を大家が具体的かつ明確に説明しなかったことなどを理由に、また大阪高裁平成21年8月27日判決は、1年ごとの更新料が家賃の2ヶ月分余りであるという事案で、更新料が高額であるということなどを理由に、更新料特約は消費者契約法10条に違反して無効であるとしていました。その一方で、更新料特約は法的に有効であるとした高裁判決もあり、最高裁判決の結論が待たれていました。
しかし、最高裁平成23年7月15日判決は、更新料条項は、額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間などに照らし、高額すぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと判示しました。
したがって、この最高裁判例によれば、賃貸借契約期間が2年間で、更新料が家賃の2ヶ月分という更新料特約は、特段の事情がない限り法的に有効ということになります。
ただし、更新料特約に違反して更新料を支払わなかったとしても、大家さんが賃貸借契約を解除するためには、信頼関係を破壊する特段の事情が必要ですし、更新拒絶をする場合には借地借家法に規定された「正当事由」の存在が必要です。ですから、この更新料不払いが、信頼関係を破壊する特段の事情や「正当事由」に当たると認められなければ契約の解除や更新拒絶は認められません。
微妙な判断にはなりますが、様々な事情で更新料を支払うことができないという場合、一般的には直ちにアパートを出ていかなければならないということにはなりません。このような場合は遠慮なく弁護士にご相談下さい。
このQ&Aは、過去の相談をもとに掲載しています。題名横の日付の時点での回答ですので、その後の法改正などにより、現在は内容が変わっている場合もありますので、ご了承下さい。