「福島原発避難者訴訟」を提訴

弁護士 米倉  勉

 昨年10月以来、「福島原発被害弁護団」を結成して、その活動に加わっています。弁護団は80人を超え、多くの被害者からの聴き取りをしてきました。それぞれの被害状況をまとめて東京電力に対する請求書を作成し、東電側担当者・代理人と直接交渉をして、合意できる部分から一部和解・賠償支払いを得るように努力してきました。私は弁護団の幹事長という立場で、これらの活動の裏方を担っています。

 原発事故・政府の避難指示によって自宅を追われ、県内各地あるいは県外の仮設住宅や借り上げ住宅(民間アパート)での避難生活を強いられている被害者の状況は深刻です。被害者は、突然それまでの仕事(事業や勤務)、学業、そして地域での生活を遮断されて、あてどのない状況に放り出されたのです。考えてみて下さい、人々は皆、それまでの人生を過ごし、さまざまな努力と時間を注いできた仕事や生活を、強引に止めさせられました。避難先でも継続できるのは、ごく一部の特殊な仕事だけでしょう。ほとんどは事実上廃業・解雇の状況に追われ、再開の展望がないのです。戻れるのか、無理なのか、それは何時になるのか。中途半端な状況で、事業再開も転職もままならず(不況に加えて膨大な避難者の流出は、就職難も招いています)、焦燥感が募ります。

 人生は有限です。家族もいます。早く新たな生活を立ち上げたい。生活の本拠地たる自宅も再建したい。何年先になるか判らない帰還は諦めて、避難先で再出発したいと考えるのも当然でしょう。

 しかし東電側は、政府の原陪審が定めた基準(「中間指針」)の水準を、あたかも賠償額の上限であるかのように扱い、あるいは先送りにするための道具として利用し、極めて限定された賠償にしか応じません。到底再出発に必要な費用が賄える回答ではないのです。避難前と同じ程度の住宅環境を手に入れ、家財道具をそろえようとすれば、それなりの金額が必要です。それでも、本当に元どおりにはならないし、今後の不安は大きいのです。東電の対応は、極めて不当です。

 そこで、私達は「自主交渉」には限界があることを見据えて、12月3日に、福島地裁いわき支部で、訴訟を提起しました。弁護団は、法的な強制力がある司法的救済=裁判手続による救済を求めて、ついに40人の被害者を原告とする集団提訴を行い、完全賠償・生活再建を要求することにした次第です。

 今回の提訴原告は「第1次原告」に過ぎません。被害者はまだまだ沢山待っています。弁護団では、これからも第2次、3次の原告団による提訴を行い、併合審理を求めます。さらにこれらの結審・判決後は、併行して「第2陣」訴訟も必要になるでしょう。

 これらを通じて、できるだけ早く、生活再建を果たすよう、頑張っていくつもりです。そのためには、被害者の境遇に対する社会的理解と応援の声が必要です。どうかみなさまのご理解をいただき、被害救済のご支援を頂けますようお願いします。

被災地岩手県大船渡市での震災法律相談活動

弁護士 吉田 悌一郎

1 東日本大震災は、今も被災地に大きな傷跡を残しています。私が所属する国際人権団体である特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウでは、東日本大震災を受け、特別に震災問題対策プロジェクトチームを立ち上げ、平成23年10月から、被災地である岩手県大船渡市で1ヶ月に2回程度、土日を使って地元の被災者の方々を対象に無料法律相談会を開催しています。私もこのプロジェクトチームの一員として、これまで6回ほど大船渡を訪れ、震災法律相談活動を行ってきました。

2 大船渡市は人口約4万人、岩手県の南部に位置する沿岸部地域で、震災及び津波によって甚大な被害を受けた地域の1つです(平成24年8月31日時点で死者340人、行方不明者81人、建物被害5520世帯)。もともと漁業で有名な町ですが、現在も、津波によって流されたJR大船渡駅周辺の市街地は、生々しい津波の傷跡を残しています。大船渡では、地元の民間ボランティア団体である夢ネット大船渡が、岩手県からの委託を受け、市内北部に位置する三陸鉄道盛駅(さかりえき)の駅舎を借り切り、そこを市内復興の拠点とするべく、地元の人たちの交流のためのサロンを開いています。私たちは、この夢ネット大船渡の協力を得て、盛駅の駅舎で地元の被災者を対象とした無料法律相談活動を行っているのです。

3  具体的な相談の内容としては、亡くなられた方の財産の相続の問題、津波で流された住宅や仮設住宅の期限の問題、ローン等の借金問題、離婚等の家族関係のトラブルに関する相談が多くあります。特に最近は、震災から1年半以上が経過し、多くの被災者は義援金等を生活に使い果たし、生活が困窮している方や、震災を機に家族間の紛争ごとが悪化してしまっているようなケースが増えているように感じます。無料法律相談会は、毎回それなりの相談件数があり、まだまだ多くの被災者が震災にまつわる悩みやトラブルを抱えているというのが現場での実感です。

4 毎回、土曜日の相談会が終わると、地元の大船渡復興屋台村に繰り出すのも私の毎回のパターンになっています。ここは津波被害に遭った大船渡市中心地に店を構えていた方々が集まり、津波被害の跡地にまとまって仮設の店舗を建設し、飲食店を営んでいる場所です。毎回飲みに行くお店は同じで、お店の人ともすっかり顔なじみです。ここにお店を構えている方々も、多くは津波で自宅や店を流され、現在は仮設住宅に住みながらここで頑張ってお店を切り盛りされている方々です。お店の人もお客さんも皆心温かい人たちで、ヨソ者の私も温かく迎え入れてくれます。お店の人が焼いてくれる美味しい魚を食べながら会話も盛り上がり、ついつい杯を重ねてしまいます。

5 全国を震撼させた東日本大震災。震災直後は多くの被災地の現状が頻繁に報道されていましたが、時間が経つにつれて被災地の報道も少なくなり、世間の関心も薄れているように思います。しかし、被災地の現場ではまだまだ多くの課題が残っており、多くの支援が今後も必要です。今後も継続して大船渡に通い、私も微力ながら被災者支援のお手伝いを続けて行きたいと思います。

国公法弾圧事件 ―猿払事件最高裁判決を実質的に変更―

弁護士 小林 容子

 12月7日、最高裁第二小法廷は、国公法弾圧2事件を大法廷に回付して猿払事件最高裁判決を変更し、違憲無罪判決をせよという要求を無視して、それぞれの上告を棄却する判決を言い渡しました。

 その内容は、国公法・人事院規則にいう「政治的行為」とは、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為の類型を規定したもの」であると限定して、国家公務員の政治的行為を一律・全面的に禁止した国公法・人事院規則を合憲であるとした猿払事件最高裁判決を実質的に変更するものでした。

 そのうえで、堀越事件については、「本件配布行為は、勤務時間外である休日に、国ないし職場の施設を利用せずに、公務員としての地位を利用することなく行われたものである上、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく、公務員であることを明らかにすることなく、無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって、公務員による行為と認識し得る態様でもなかった」として、無罪の判断をしました。この結論については、検察官出身の裁判官を含め4人全員が一致しています。

 これに対し、世田谷事件については、宇治橋さんが「管理職的地位」にあったことをとらえて有罪を維持する判断をしました。しかし、判決自体が示した基準に照らせば、須藤裁判官の反対意見が言うように宇治橋さんも無罪となるはずです。

 最高裁が、猿払事件最高裁判決を変更して国公法・人事院規則が違憲であると判断することを避けたこと、宇治橋さんを有罪としたことは極めて不当です。しかし、国公法・人事院規則の形式的な適用を否定したことは、国家公務員に政治活動の自由を認めたということでもあります。地方公務員の政治活動も国家公務員並みに一律全面的に禁止しようという動きがありますが、地方公務員法の改悪が憲法に違反することも明確にしました。

 これまでの皆様のご支援に心からお礼を申し上げるとともに、国公法・人事院規則の改廃、地公法改悪の阻止、表現の自由・政治活動の自由を確立する取り組みに、引き続き大きなご支援をいただけますようお願い致します。

東京地裁、国の責任を認める ―建設アスベスト東京地裁判決―

弁護士 森  孝博

1  2012年12月5日、東京地方裁判所において、首都圏建設アスベスト東京訴訟(原告308名〔患者単位、以下同様〕)の判決が言い渡されました。

 この判決は、国の労働関係法規に基づく規制権限不行使の違法性を明確に認め、国に対して、原告158名へ総額約10億6394万円の損害賠償を支払うように命じました。いま国内で最大のアスベスト被害をこうむっている建築現場について、その責任が国にあることを裁判所が初めて認定した点は画期的なものといえます。

 具体的には、国は、1981年1月時点(アスベスト吹付け作業については1974年1月時点)で、省令を改正し、アスベスト建材の切断等の作業を行う労働者に防じんマスクを着用させることを罰則をもって事業者に義務付けるとともに、アスベスト建材への警告表示や建築現場での掲示の内容として、アスベスト粉じんが肺がんや中皮腫などの重篤な疾患を生じさせるものであることを明示した上、切断等の作業を行う際には必ず防じんマスクを着用するよう明示することを義務付けるなどの規制を行うべきであったのに、これを怠ったのは著しく不合理であり、違法であると断罪しました。

2  ただ、残念ながら、この判決はいくつかの欠点も抱えています。

 建築産業においては、ゼネコン等が雇用管理責任などを回避するために何重にもなる下請構造(重層下請構造)を形成したため、多くの建設作業従事者が一人親方や個人事業主という形態で働くこととなり、建築現場では労働者、一人親方、個人事業主が混在して同様の建築作業に従事し、重篤なアスベスト疾患に罹患することになりました。それにもかかわらず、裁判所は1981年の時点で「労働者」だったのか否かという点だけで線引きをし、一人親方等であった原告ら135名は保護対象外として切り捨てました。こうした不当な線引きを許すことはできません。

 また、国とともに建築現場に深刻なアスベスト被害を生じさせたアスベスト建材製造企業の責任について、危険なアスベスト建材を製造・販売する企業として負う警告義務違反(過失)があったことを認め、「企業が、被害者である建築作業従事者に対して何ら責任を負わなくてもよいのかという点については疑問があるといわざるを得ない」とまで判示したのにもかかわらず、最終的に共同不法行為の成立を否定して被告企業を免責しました。この点も絶対に容認できません。

 その他にも、同じ建築現場で働いてきたのにもかかわらず屋外作業や間接曝露のみの原告を切り捨てた点、早期のアスベスト建材の製造等禁止を認めなかった点、不当な理由で認容金額を減額している点など、看過できない問題があります。

3  こうした問題点を抱えるものの、この判決は建築現場に悲惨なアスベスト被害をもたらした国の責任を厳しく断罪しており、じん肺・アスベスト被害根絶に向けたたたかいにおいて重要な意義をもつものです。

 日本ではこれまで約1000万トンものアスベストを輸入し、そのうちの70%以上を建材に使用してきました。そのため、現在、アスベストを原因とする肺がん・中皮腫による労災認定者数だけでも、戦後最大の職業病といわれるじん肺を超え(毎年1000名超)、その過半数が建設業に集中しています。今後も建設作業従事者の中から重篤なアスベスト被害が多数発生することが予測されています。さらに、いまもアスベストを含む建物の解体作業や瓦礫処理などは全国各地で行われており、アスベスト曝露防止を徹底しなければ、新たなアスベスト被害者が増え続けることになります。

 原告らの「生命あるうちの解決を」という願い、そして、すべての建設アスベスト被害者の早期救済、アスベスト被害根絶の実現のために、この判決の問題点を控訴審において正すとともに、積極的側面は最大限に活かして法廷内外でさらなる前進を勝ち取りたいと考えていますので、今後ともご支援・ご協力をお願い申し上げます。

脱原発・自然エネルギーが日本を変える!

弁護士 原 希世巳

脱原発は可能?

 昨年、野田内閣は「エネルギー環境戦略」で「原発稼働ゼロを目指す」と言いながら、大飯原発再稼働を認め、核燃料再処理を継続するなど、矛盾した態度を続けました。自民党は「原発ゼロは無理」などと言ってます。

 原発をやめると火力発電を増やさなくてはならないので、大気汚染も増えるし、 地球温暖化もますます進む、「自然エネルギー」も太陽光や風力は気象の影響を受けて不安定だ、という議論があります。本当にそうなのか。勉強するつもりで「公害地球懇」という市民団体主催の「私たちで作ろう自然エネルギー」というシンポジウムに行ってきました。

住民が自然エネルギーの「生産者」に

 昨年7月に自然エネルギーの電力買取制度ができたことから、各地でメガソーラー発電の計画が進んでいることが報じられています。このシンポジウムでは、大企業がやるのではなく、各地域で市民の出資を募ってソーラー発電を進めていく運動が進んでいることが実にリアルに報告されました。

 東大阪市では保育園の屋根に市民共同発電所を設置した取組、東京の多摩市では多摩ニュータウンの屋上や市役所や学校などの公共施設の屋根を賃借してパネルを設置していく計画が進んでいること、長野県大町市では北アルプスの扇状地を縦横に流れる農業用水で小水力発電所を作った取組などが報告されました。これらはボランティア運動ではなく、企業活動として採算の取れるものとして進められていることが特徴です。

 首都圏でも多くの自治体が市民への助成金制度を設けています。会場発言では世田谷区でも区が太陽光パネルの設置を望む区民に有利な条件で業者を仲介する制度を設けていることが報告されました。

自然エネルギーは原発に代わるものではない

 私がやや意外に思ったのは、これら自然エネルギーの普及のため実践なさっている方々は、皆さん省エネルギーの重要性を力説していることでした。「つらい省エネはダメ。」これはおっしゃるとおり。建物や機械、車など脱原発・自然エネルギーが日本を変える!は更新時に(これが鍵だそうです)最新の省エネ型にするだけで2020年には20%、2030年には35%の電力を削減することができるとのことです。

 昨年の夏も省エネ努力によって、終わってみれば原発再稼働は不要だったことが明らかになりました。原発を止めても省エネと自然エネルギーの拡大により火力発電は減らせるのです。自然エネルギーは原発に代わるものではない、この点私も認識を改めました。

 なおLNG火力発電(出力の調整が容易でCO2も比較的少ないそうです)を補助的に使えば、自然エネルギー発電の不安定性は十分にカバーできるとのことでした。

自然エネルギーは経済持ち直しの萌芽

 日本は化石燃料の大部分を輸入に頼っています。石油や天然ガス、石炭などですが、その輸入代金はいくらか知っていますか。答は年間25兆円! 国民一人当たり20万円を毎年外国に払っている計算です。これを1割減らして年間2.5兆円を自然エネルギーの開発に回せば、日本は変わると思います。

 シンポではある経済学者さんが、太陽光も風力も地熱も水力も各地域の資源ですから、これを地元の企業や市民・農民が使って地元に利益を還元していく経済システムを作っていくことで、大企業は去っても日本の経済は確実に持ち直していくと言っておられました。

 大企業によるメガソーラーは、地域の資源(太陽光)を大企業が持って行って自分の利益にしてしまう訳で、本質的には原発と変わらないかもしれません(事故の危険と放射性廃棄物がないのは結構なことですが)。

 脱原発、自然エネルギーを進めていくことは、国のあり方を変え、大きな発展につながる突破口になるかも…。久しぶりに高揚した気分で帰ることのできた集会でした。

【教えて おばあちゃん】消費税増税はぜったいダメ!

事務局 永谷 美代子

あかね:
 「お父さんのボーナスは減るし、消費税は上がるし…」って、お母さんがため息ついてたよ。私もお小遣いの値上げ、言いそびれちゃった。

おばあちゃん:
 ボーナスが減る、年金が減る、お店の売上げも落ちる、こんな時に増税したら、消費の冷え込みがますます進んで、家計も日本経済もたち行かなくなるのは目に見えてるのに、政府は何考えているのかねぇ。

あかね:
 でも、被災地の復興財源が足らないからとか、社会保障費に回すからと言われたら、増税もしょうがないのかなって、気もするし…。

おばあちゃん:
 ねぇ、あかね。家計が赤字になったら、おまえならどうする?

あかね:
 ウーン、まず無駄遣いを減らす。

おばあちゃん:
 そうだね。でも政府は大型公共事業に今後10年間で200兆円もお金を使おうというんだよ。このお金を復興財源にまわせば、どれだけの人が助かるだろうね。
 大企業やお金持ちへの減税をやめて応分の負担をしてもらうもらうだけで1兆7000億円の増収になる。これで保育園や特別養護老人ホームを増やせば、安心して働きに出られる人がたくさんいるし、フルタイムで働いても食べていけない非正規雇用の人たちが正社員になれば、その人たちの懐が暖かくなって買い物もするし、税金も払うようになるから国の税収も増えるんだ。

あかね:
 エーッ、それって一石二鳥じゃない。

おばあちゃん:
 そうそう。ポルトガルで消費税を増税したのに税収が減ってしまったのは、増税で国民を痛めつけて、人々の暮らしのおおもとをダメにしてしまったからなんだよ。日本だって給料は下がり続け、その上この8年間で8兆3630億円も社会保障費が削られてるから、庶民の暮らしは悪くなる一方なのに。それに加えてパナソニックなど電機・情報産業では13万人の大量リストラをするっていう話じゃないか。そこへ消費税が増税されたら、経済の立て直しどころか、致命的なダメージになるだろうね。なんとしても、増税を止めさせないと! おやおや、あかね、どこへ行くんだい?

あかね:
 総理官邸よッ。安倍さんに言ってやらなきゃ!

【Q & A】改正労働者派遣法について

Answer/ 弁護士 髙橋 右京

私は、前の会社を解雇されて以来、正社員としてなかなか採用してもらえず、今は派遣会社に登録し、いくつかの派遣先を転々とし、今は電機メーカーの工場に派遣されています。この工場では1年以上派遣されていますが、いつまた契約が更新されず、職を失ってしまうのではないかと、とても不安です。最近、労働者派遣法が改正されたと聞きましたが、その改正によって、このような私の不安定な生活が改善されるようなことはあるのでしょうか。

 2012年3月28日、労働者派遣法の改正法が成立し、同年10月1日より施行されました。もともとの政府案では、不安定雇用の大きな原因といえる、登録型派遣業や製造業への派遣を原則禁止するという規定がありましたが、与野党3党合意により、この規定は削除されてしまいました。また究極の不安定雇用ともいえる日雇派遣についても、3党合意により、禁止される範囲が雇用期間2ヶ月以内の日雇派遣から雇用期間30日以内の日雇派遣にまで縮小されてしまいました。これらの点で、改正法は、労働者の保護の観点からとても不十分なものになってしまいました。

 あなたの場合、製造業への派遣ですが、今回の改正ではこのような派遣も許されるということになってしまいました。

 改正法では、不十分とはいえ、労働者保護のための以下のような規定も設けられました。
①派遣会社に、マージン率等の公表が義務づけられた。
②派遣会社に、派遣先正社員との均等待遇に配慮すべき義務が課せられた。
③派遣会社に、雇用期間が通算1年以上の派遣労働者に対する、無期雇用への転換の機会の提供や紹介予定派遣の対象とするなどの措置をとるよう努力すべき義務が課せられた。
④離職後1年以内に、派遣労働者として元の派遣先に派遣することが原則禁止された。

 あなたの場合、同じ派遣先で同じ業務に1年以上従事していますから、もともと旧法下でも、派遣先に対して直接雇用するよう要求できた可能性があります(改正法40条の3)。しかし、改正法の下ではさらに、派遣会社に対しても、上記③のとおり、無期雇用への転換の機会の提供や、派遣先に対する直接雇用のあっせんを予定して行われる紹介予定派遣の対象とすることなどを、要求することができる可能性があります(改正法30条)。

 派遣労働者の皆さんは、このような派遣法の規定を知らず、損をしていることも多々あるのではないかと思います。もし少しでも疑問に思われたことがあれば、ぜひ気軽に、弁護士にご相談ください。