法律 Q & A

 相談者の方からよくうけるご質問を、Q&A形式でご紹介いたしました。

※このQ&Aは、過去の相談をもとに掲載しています。題名横の日付の時点での回答ですので、その後の法改正などにより、現在は内容が変わっている場合もありますので、ご了承下さい。

  • 放置車両の撤去(2020.11.26)

    自分の持っている土地に他人の車が放置されたままになっています。どうしたらよいでしょうか。

    回答:弁護士 森 孝博弁護士森孝博写真

     自分の土地に他人の車を放置されたら腹立たしいですが、法的手続を経ないで自分で車を撤去させることは原則禁止されており、勝手にレッカーなどで移動してしまうと、のちに車の持主から損害賠償を請求されるおそれもあります。
     もし放置された車が盗難車であれば、刑事事件として警察が対応してくれる可能性があるので、まず警察に放置された車が盗難車であるかを問い合せてみるとよいでしょう。
     ただ、警察は、犯罪を構成するような悪質な場合でない限り、私有地内の問題については基本的に介入しないという立場(民事不介入)なので、警察が対応してくれない場合は、個人で対応しなければなりません。その場合、まずは、張り紙や内容証明郵便等で車の持主に対して車を撤去するように警告します。それでも撤去に応じてもらえなければ、土地の所有権に基づいて車の撤去を求める訴訟等を提起して勝訴判決を取得し、その判決が確定しても撤去されなければ、強制執行によって車を撤去することになります。
     このようにいったん放置された車を撤去させるのは容易ではないので、まずは車を放置されないように土地の管理に努めましょう。それでも放置されてしまった場合は、法的手続を要する可能性が高いので、困ったら弁護士にご相談下さい。

  • マンションの滞納された管理費を回収する方法(2020.11.26)

    私は、自宅のマンションの管理組合の理事をしています。同じマンションの区分所有者で、マンションの管理費を1年以上も滞納している人がいます。きちんとマンションの管理費を支払ってもらうために、何か法律的な方法があったら教えて下さい。

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     マンションの管理費は、マンションを適正に維持・管理していくために不可欠なお金であり、マンションの区分所有者には通常管理費の支払い義務があります。ところが、この管理費を長期間にわたって滞納する人がいます。滞納が長期化すれば、滞納額が数十万円から百万円単位にもなって、マンション自体の資産価値も下がりますし、他の区分所有者にとっては深刻な問題です。
     この、滞納管理費を回収する方法として、まず最初は、滞納者を訪問して請求したり、内容証明郵便で請求書を送るという方法があるでしょう。内容証明の場合は、普通の請求書よりもやや相手に与えるインパクトが強くなります。
     それでもダメな場合は、法的な手段に出ることになります。まず、簡易裁判所の支払督促手続を利用すれば、簡単な手続で請求することができます。しかし、支払督促は相手方から異議申立をされると、通常の裁判に移行します。裁判になった場合、滞納の事実は比較的簡単に証明できますので、勝訴の判決を取ることは可能でしょう。さらに、管理費を滞納する行為は、区分所有者の共同の利益に反すると考えられますので、区分所有法59条に基づいて、その滞納者のマンションの区分所有権及び敷地利用権の競売を請求するという方法もあります。

  • 子どもの面会交流について(2020.11.26)

    私は離婚し、母親である私が親権者となりました。 未成年の子どもと父親との面会の方法について、話し合いがつかないときはどうしたらいいですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     家庭裁判所で調停を申し立てて、話し合うことができます。基本的には、子どもの福祉のために 一番良い方法を考えます。調査官という専門家が、両親双方の生活状況や、子どもの意向調査などをして、報告書を作成し、判断の材料にします。「試行面会」といって、裁判所で実際に会ってみて、その様子を双方が見る手続きも行われます。
     離れて暮らす親で『自分の当然の権利だ』と主張し、親権者に義務を押しつけるような言動をとる人もいますが、あくまでも『子どもにとって良い方法を考え、双方で協力する』と考えるべきです。
     子どもにとっては、離れてしまった親からもちゃんと愛されている、捨てられたのではないと、感じて、交流を持って成長することが重要だと考えられています。
    このような手続きを経ても、合意に至らない場合は、裁判所が『審判』で決定します。 個別具体的には、色々な事情が異なりますので、丁寧な対応が必要です。一概に結論を出すわけにもいきません。できれば弁護士にご相談いただいた方が良いと思います。

  • 子どもへの体罰はだめ!(2020.02.20)

    親でも、子どもに体罰を加えることが禁じられたと聞きました。でも、「しつけ」をすることは子どものためになるのですから、「しつけ」のためであれば多少の体罰も許されるのではありませんか。

    回答:弁護士 小林 容子弁護士小林容子写真

     2019年4月1日から、保護者による子供に対する体罰を禁止した、「東京都子供への虐待防止等に関する条例」が施行されました。また、国のレベルでも、今年(2020年)4月から施行される改正児童虐待防止法では、親による子どもへの体罰を禁止しています。
     これらの条例や法律は、最近よくニュースで見たり聞いたりする、親が子どもに対し、「しつけ」名目で、体罰を加える、暴言を吐く、食事を与えないなどによって、子供が命を失うなどの痛ましい事件が起きたことを踏まえ、このようなことを防ごうというものです。
    確かに、親にとって「しつけ」は難しい問題です。子供を従わすときに、体罰を使えば手っ取り早いかもしれません。しかし、体罰に頼ることは、恐怖や痛みによって子供を従わせているだけです。暴言や暴力が子供の成長に悪い影響を与えるという研究結果も報告されています。
     子どもの権利が守られ、大切にされる社会は、私たち大人も大切にされる社会です。一人一人が大切にされる社会を作りましょう。

  • 遺言書についての法律改正(2020.02.20)

    自分が死んだ後、子どもたちが相続でもめないように、遺言を作ることを考えていますが、どのようにして遺言を書いたらよいのでしょうか。公正証書を作らず、自分で書くこともできると聞いたことがあるのですが。

    回答:弁護士 髙橋 右京弁護士髙橋右京写真

     ご自分に万が一のことがあった場合に備え、遺言書の作成をお考えの方もいらっしゃると思います。遺言が法的に有効と認められれば、残された相続人全員による遺産分割協議を経ることなく、遺言書どおりに遺産が分配されることになりますが、この効果が認められるためには、厳格な要件を満たすことが必要です。遺言者が自分で手書きで遺言を作成することもできますが(「自筆証書遺言」といいます。)、例えば日付を書き忘れたら、それだけで無効です。
     しかし、より遺言書を利用しやすいものとするため、2018年7月の民法相続編の改正により、遺言書の方式について、少し要件が緩和されました。たとえば、自筆証書遺言に「遺産目録」(遺産の一覧表)を添付する場合、これまではそれもすべて遺言者が手書きで書かなければならなかったのですが、この度の改正で、預金通帳の写しの添付も認められるようになります(ただし、全ページに署名・押印することが必要です。)。
     また、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度も新設されました。この制度を利用すれば、遺言書の紛失や変造などを防止することもできます。
     ただ、要件が緩和されたとはいえ、その要件をきっちり守らないと、せっかく書いた遺言が法的に無効になってしまうことに変わりはありません。
     間違ってもそんなことにならないよう、遺言書の作成をお考えの方は、どのような方式、形式で遺言を作成すべきか、必ず一度は、弁護士に相談するようにしましょう。

  • 父親の葬儀費用(2020.02.20)

    父親が亡くなり、葬儀費用や病院代の請求が来たけれど、父親の銀行口座が凍結されてしまい支払いの資金がありません。父がコツコツと貯めた預金が1,200万円位あるのですが、その預金で支払うことはできないのでしょうか。相続人は、私も含めて、子供2人です。

    回答:弁護士 原 希世巳弁護士原希世巳写真

     銀行は相続開始の連絡を受けると、被相続人の預金を凍結し、相続人全員の印鑑証明付きの書類と被相続人が生まれたときからの戸籍謄本など大量の書類がない限り預金が下ろせなくなります。そこで預金の名義人が危篤状態のうちに、あるいは死亡後、銀行に相続開始を知らせずに、カードで預金を下ろしてしまうケースがかなりあります。これが結構相続人間のトラブルの元になります。
    ところが預金名義人が死亡したことを銀行に伝えてしまった場合には、このような方法も採れなくなります。そこで昨年の7月から民法が改正され、相続人は自分の相続分の3分の1の金額については相続人全員のハンコがなくても死亡した人の口座から下ろすことができるようになりました。子ども2人が相続人で亡父に1200万円の預金があるということですので、相続分は一人2分の1ですから、1200万円の2分の1の3分の1、つまり子どもは一人200万円ずつは自由に下ろせるようになりました。

  • 賃貸マンションのハウスクリーニングと敷金(2018.10.20)

    借りていたマンションを大家に返す際に、大家から、部屋のハウスクリーニング代を敷金から差し引くと言われました。このように敷金からハウスクリーニング代を天引きすることは許されるのでしょうか?

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     敷金は、通常、借主の家賃の未払いが生じた場合など、借主に債務不履行があった場合の担保として、借主が入居する際に支払うお金です。敷金は、賃貸借が終了してマンションから退去した後、大家から借主に返還されます。敷金については、特に現行の民法には規定はありませんが、不動産賃貸借のいわば慣習となっています。
     一方で、借主は、賃貸借が終了してマンションから退去するとき、マンションの部屋を原状に回復して返す必要があります(民法616条・598条)。これを原状回復義務といいます。
     それでは、設問のように、大家が借主の原状回復義務の一環として、部屋のハウスクリーニング代を敷金から差し引くことは許されるのでしょうか?
     この点については最高裁の判例があり、借主は、その部屋の通常の使用に伴う損耗や汚れなどについては、賃料に含まれており、その点については原状回復義務は負わないとされています(最高裁平成17年12月16日判決)。
     したがって、そのハウスクリーニングが、借主の通常の使用にともなう汚れなどを清掃する性質のものであれば、大家がその代金を敷金から差し引くことは許されないことになります。他方で、例えば借主が長年その部屋でタバコを吸っていたために、部屋の壁紙がヤニで変色し、また臭いが取れないために大家が壁紙を貼り替えざるを得なくなったような場合には、現在では借主の通常の部屋の使用による汚れを越えるものと判断される可能性があります。その場合には、壁紙の張り替えは借主の原状回復義務の範囲に含まれることになり、大家は敷金からその費用を差し引いて返すことができるということになります。
     なお、現行の民法は大幅に改正され、2020年4月1日からこの新しい民法が施行される予定になっています。この改正法では、敷金についても条文で明示されることとなりました(改正法の622条の2第1項)。また、上記の原状回復義務の範囲についても、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化については、借主は原状回復義務を負わないと明確に規定され、上記の最高裁判例の内容が明文化されることになりました(改正法の621条)。

  • 遺留分(2018.4.1)

    私の家族は、父、母、兄(長男)、私(長女)の4人ですが、先月、父が亡くなりました。父は、生前、父の全財産を兄に相続させる旨の遺言を残していたのですが、この遺言が有効だとすると、私には父の財産を相続する権利が全く無いのでしょうか。

    回答:弁護士 森 孝博弁護士森孝博写真

     死後の財産処分は遺言によって自由に決めることができますが、一定の法定相続人(遺留分権利者)の生活の安定を図る必要などがあることから、遺言の内容にかかわらず、こうした方々に一定割合の相続財産(遺産)の承継を保証する「遺留分制度」(民法1028条以下)という制度があります。

     この遺留分権利者というのは、兄弟姉妹以外の法定相続人となります。遺産に占める遺留分全体の割合(総体的遺留分)は、①直系尊属(親、祖父母など)のみが相続人である場合は遺産の1/3、②それ以外の場合は遺産の1/2、とされており、この総体的遺留分を法定相続分に従って配分したものが各遺留分権利者が有する遺留分(個別的遺留分)となります。

     ご相談のケースでは、法定相続人が母と子2人なので上記②にあたり、お父さんの遺産の1/2が総体的遺留分となります。そして、あなたの法定相続分は1/4なので、総体的遺留分の1/4、つまり、お父さんの遺産の1/8(1/2×1/4)があなた固有の遺留分となります(なお、お母さんの遺留分は1/4〔1/2×1/2〕となります)。

     したがって、あなたにはお父さんの遺産の1/8を承継する権利(遺留分)があります。全財産をお兄さんに相続させる旨のお父さんの遺言は、あなたの遺留分を侵害していることになります。

     もっとも、遺留分を侵害する財産処分が当然に無効となるわけではなく、相続の開始後一定期間内に、遺留分権利者が権利行使(遺留分減殺請求)をすることが必要となります。期間内にあなたがお兄さんに対して遺留分減殺請求をして、はじめてあなたの遺留分(1/8)が保証されることとなるのです。

     この期間は「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」(もしくは「相続開始の時から10年」)と非常に限られているので注意が必要です。また、遺留分の割合や金額を算出することが困難なケースや、遺留分減殺請求をしたものの、任意の返還には応じてもらえず、調停や訴訟を提起せざるをえないケースも多々ありますので、「もしかしたら私には遺留分があるのでは」と疑問に思った段階で、なるべく速やかに弁護士にご相談されることをおすすめします。

  • 賃貸マンションの保証人は、ずっと責任を負うのですか?(2017.10.1)

    私は兄に頼まれて、兄が住んでいる賃貸マンションの賃貸借契約の連帯保証人になっています。ところが兄が家賃を長期間滞納して、大家さんから私に支払うように請求されています。 保証人を引き受けた以上、義務があるのは分かりますが、これからもずっと兄の代わりに家賃を負担しなければならないのは到底納得がいきません。私の責任は、いつまで続くのでしょうか。私が契約書にサインして印鑑を押したのは、5年前の契約の最初であり、2年契約でした。その後に更新の合意をしたそうですが、私は知らされていませんでした。

    回答:弁護士 米倉 勉弁護士米倉勉写真

     借家などの契約は、通常更新が予定されており、長期に及ぶことが当事者の認識であることから、更新後の滞納分についても保証人に支払い義務があるというのが最高裁の判例です。但しこの判例は、長期にわたって家賃の滞納があるのに賃貸人が保証人に連絡もせずに契約を更新した末に、高額の支払いを請求してきたような場合には、支払う義務がないとしています。このような判断からすれば、滞納期間のうち、ある程度以降の分は、減額を求めることがあり得るでしょう。また、今後については、また滞納があれば知らせてもらうよう要求しましょう。そして数ヶ月に及ぶような滞納があれば、賃貸契約の解除をするように要求することや、そうした措置をとらないのならば、さらなる更新後の保証債務は負わない旨の通知をすることで、以後の義務を免れることも可能であろうと思います。

     なおご兄弟でもありますし、お兄さんが何故家賃の滞納をしてしまうのかを、確かめることが必要だと思います。もし何かの事情で過重債務の状況に陥っているのなら、きちんと債務整理をして、これ以上の不払いに陥らないような手当をすることが先決です。もし病気などで収入がないのであれば、無理のない家賃のアパートへの転居なども考えるべきでしょうし、社会福祉の手当てなども必要です。

  • 離婚後の氏はどうなる?(2017.3.1)

    このたび、夫と話し合って、離婚することになりそうです。夫との間には小学生の子どもと中学生の子どもがいますが、子どもたちは、私が親権者となって私と生活する予定です。子どもたちは、自分たちの名字がどうなるのか心配しています。離婚によって名字はどうなるのでしょうか。

    回答:弁護士 小林 容子弁護士小林容子写真

     まずあなたの氏(名字)ですが、離婚すると、結婚に際して氏を変えた者は、結婚前の氏に戻るのが原則なので、あなたが結婚によって氏を変えていれば、結婚前の氏に戻ることになります。しかし、離婚の日から3ヶ月以内に役所の窓口に届け出ることによって、結婚中の氏を名乗り続けることも可能です。離婚届と一緒に届を提出することもできます。

     これに対し、お子さんたちは、離婚の際の父母の氏(結婚中の名字)となります。あなたが結婚前の名字に戻る場合は、あなたとお子さんたちの名字が違ってしまうので、家庭裁判所に申し立ててお子さんたちの名字を変更する許可を得ることができます。お子さんたちをあなたの戸籍に入れるにはあなたとお子さんたちの氏が同じでなければなりません。また、あなたが結婚中の氏を選んだ場合であっても、お子さんたちの籍をあなたの籍に移すために、家庭裁判所でお子さんたちの氏の変更許可をもらわなければなりません。

     仕事や学校などで使い続けた氏を変更したくないとか、結婚中の氏は使い続けたくないとか様々な思いがあるでしょうから、お子さんたちとよく話し合ってください。

     なお、やむを得ない事情がある場合は、家庭裁判所に申し立てて氏を変更することもできます。

  • 養育費と給与差押え(2016.11.30)

    私は5年前に夫と調停の結果離婚をし、月4万円の養育費の支払いを受けることになりました。しかし、支払われたのは最初の1年だけで、その後は一切支払いがなく督促しても無視されています。どうしらたよいでしょう。

    回答:弁護士 萩尾 健太弁護士萩尾健太写真

     調停調書、審判、裁判上の和解や判決、強制執行認諾文言付の公正証書で養育費の支払について決められている場合、相手が養育費を支払わなければ、強制執行ができます。強制執行には、預金の差し押さえ、不動産の差し押さえなどがありますが、相手が安定した会社に勤めているのなら、給与を差し押さえるのが確実でしょう。しかも養育費の場合は、手取り給与の2分の1まで差し押さえることができ、かつ、将来もずっと未払いが続く限り継続して毎月取り立てることができます。(ただし、相手方の勤める会社によっては、給料を差し押さえると相手方が社内でそのことを知られて退職するなどの事態もあります。)
     養育費を支払う側の給与が大幅に増額した増加したなど、養育費を決めた当時と状況が変わった場合には、家庭裁判所に養育費増額の調停・審判を申し立てることができます。ただし、養育費を支払う側の給与が大幅に下がった、養育費をもらう側の給与が大幅に上がった、というような場合は、相手から養育費減額の調停・審判を申し立てられる可能性があります。

  • 母親への後見人の選任(2016.11.25)

    正月で実家に帰り、久しぶりに両親に会いました。同居している長男(私の長兄)の話では、母親が認知症で、人に勧められて投資話に騙されそうになったそうです。今まで、家計をしっかり管理してきたのに、通帳管理も危なくて仕方ないそうです。父親は今のところしっかりしていますが、だんだん不安になってきて、自分が分からなくなったら、長男に全てを任せたいと言っているそうです。私も長男の事は信頼しています。何か方法はありますか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     お母さんについては、法定後見人を選任してもらった方が良いと思います。主治医の診断書などの必要書類を揃えて、長男が後見人となるように裁判所に申し立てれば選任してもらえます。以後長男が「後見人」として財産を管理することが出来ます。申立手続きは、家庭裁判所の窓口に相談して、ご長男がする事も出来ますが、弁護士が代理人となってお手伝いする事も出来ます。ご相談下さい。
     お父さんについては、現在すぐに後見人の選任を求める事は出来ません。ただ、公証役場に行って、長男との間で、「将来自分が認知能力が落ちた場合には、長男を後見人とする。」という任意後見契約を締結しておくことをおすすめします。合わせて「財産管理契約」を結んでおけば、長男が、父親の財産について、代理していろいろな行為をすることが出来ます。詳しくは弁護士又は公証役場にお尋ね下さい。

  • 借家の明け渡しと敷金(2016.8.30)

    賃貸マンションに5年ほど住んでいたのですが、仕事の関係で転居することになり、引っ越しを終えました。ところが賃貸人から、内装の壁や天井のクロス張り、襖の全面張り替えや畳の表替え、台所のハウスクリーニング代など合計50万円もの原状回復費を請求され、敷金の30万円では足りないから、差額を支払うようにという請求を受けています。

    回答:弁護士 米倉 勉弁護士米倉勉写真

     賃借していた室内を汚したり壊したりした場合には、原状回復の費用を負担する必要があります。しかしそれは、通常の使用による劣化を超えた「特別の損害」を与えた場合のことであって、通常の使用や経年劣化に関してまで、借りている人が負担する義務はありません。5年程度の使用でどの程度の損傷が生じたのか、事実(実情)の確認が大切です。
     賃貸人が、資産の経年劣化の回復に必要な費用まで賃借人に負担させようとするのは無理なことであり、そのような場合には、上記の説明をして負担を拒否するべきでしょう。このことは、契約書に「特約」として書いてあっても同様だと考えます。公序・良俗に違反する無効な特約だからです。
     仲介業者も交えてよく協議することが第一ですが、どうしても平行線なら、簡易裁判所に低額訴訟を申し立てることも考えられます。裁判所が間に入って、常識的な腺での和解を勧めてくれる可能性もあります。

  • 地代の減額について(2016.4.28)

    私は父の借地上に建てた家に、もう代替わりして40年住んでいます。地主から、従来通りの地代で契約して欲しい、と言われました。いままで、地主とケンカしないように、地代の値上げに応じてきましたが、私が近所の不動産屋に聞いたところ、近隣の地代よりもうちは随分高く払ってきたようです。その分、地代を大幅に減額してもらいたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

    回答:弁護士 萩尾 健太弁護士萩尾健太写真

     借地契約書上、地代については、近隣の価格や公租公課に照らして、増減できる、となっているのが通常です。減額できる、という条文になっていなくても、法的には減額できます(借地法12条)。
     まず、そうした条文の内容に照らして周辺の地代の事例や、固定資産税評価証明などにもとづき、適正と思われる賃料について、通知してください。ただし、法的手続で結論が出るまで、その後も現在の賃料を支払い続ける必要があります。
     法的手続としては、まず裁判所に調停を申し立てます。裁判所には専門の調停委員がいて話してくれ、適正と思われる賃料を提案してくれます。ただし、以前、高くとられていたから、大幅に下げたい、と思っても、むしろ、賃料額は継続性が重視されるので、下げるべき、と言われても、そう大幅には下がりません。
     調停で話し合いが付かないと、調停の場で鑑定をするか、調停は終わりにして、裁判所に訴訟を起こして、そこで主張を出し合い、話し合いが付かなければ、やはり鑑定をすることになります。
     鑑定は数十万円費用がかかりますので、賃料減額ができたとしても、あまり得にならない可能性があります。
    近隣の賃料や公租公課の具体的な調査、調停の進行など、難しい面がありますので、具体的に弁護士に相談してみてください。

  • これからどうする戦争法(2016.1.1)

    憲法に違反する戦争法案が成立してしまいました。これをなくすためにはどうしたらいいですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     まずは、「戦争法を廃止する。」という目標で一致できる野党が、当面の選挙で協力し合い、多数派を形成して「戦争法の廃止」を目的とする連合政府を作るという方法があります。

  • 今、自民公明の与党は、多数を握っていますが、そんなことができるんですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     現在の小選挙区制では、自民党の議席は多数とは言っても、全有権者の内のたった17%程度の得票率しかありません。昨年の衆議院選挙で沖縄の4つの選挙区で辺野古基地に反対する「オール沖縄」の候補者が当選したように、「戦争法を廃止するオールジャパン」の候補者を多数当選させることが可能なのです。

  • 選挙はいつですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     来年の夏に参議院議員の選挙があります。
     まずは、安保法案に賛成した議員は当選させないという意思を投票行動で示すために、多くの人がまず選挙に行くことが必要です。
     そして、衆議院の選挙も控えています。この二つの選挙で実現させた連合政府で戦争法を廃止する法案を上程して、国会でこれを可決すればいいのです。また、内閣としては、「集団的自衛権は憲法9条違反ではない」との閣議決定を撤回する閣議決定をすることになります。
     いずれも、その理由は、『憲法に違反する法律、国務に関するその他の行為は無効』という憲法98条に根拠を持つ正当な法案、閣議決定となります。

  • 今の野党はいろいろ政策について対立があるように見えますが、そんなことができるのですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     憲法に明白に違反する法律案を、議事録にも「聴取不能」と書かれているような強行採決という方法で成立させたのです。この法案を廃止することは、野党が今何をおいても解決しなければならない最重要課題です。そのために一致できる限度で重要政策をすりあわせ、争いのある政策はとりあえず棚上げして、この一点でまず共闘することが大切であり、可能なはずです。戦争法案廃案を要求して声をあげた多くの国民も願っていることです。

  • 「労働審判」のメリット・デメリット(2015.8.1)

    先日、長年勤めていた会社を、全く身に覚えのない理由で突然解雇されました。全く納得がいかないので、会社の責任を追及したいのですが、かといって、長い時間をかけて裁判をやるのも億劫です。「労働審判」という制度があると聞いたことがあるのですが、どんな制度ですか。普通の裁判と比べて、何かデメリットはあるのでしょうか。

    回答:弁護士 髙橋 右京弁護士髙橋右京写真

     労働審判とは、2004年から始まった比較的新しい制度で、個別の労働関係紛争(解雇事件、残業代請求、セクハラ・パワハラの損害賠償請求など)のみが対象とされる制度です。

     一番の特徴は、期日が最長3回までと制限されている点です。この3回の期日の中で、裁判所の主導で話し合いによる解決(調停)を目指して審理が行われます。話し合いが付かないと裁判所が「審判」を下し、当事者のどちらかが異議を申し立てれば民事訴訟に移行しますが、8割方は話し合いで解決すると言われています。しかも、実際は1~2期日で終わることが多いので、早ければ申立ててから1~2か月で事件は終了します。この短期解決が労働審判の最大のメリットです。

     しかし、実質的な審理はほとんど第1回期日でしか行われませんので、民事訴訟のように、複雑な事案をじっくり審理することは困難です。また、基本的には話し合いによる解決(解雇事件の場合でしたら、いわゆる「金銭解決」)を目指す制度ですから、本気で復職を考えるのでしたら、通常の民事訴訟の方が適切かもしれません。

     このように、労働審判には、メリットもデメリットもあり、民事訴訟か労働審判かの選択には、その事案やご本人のご意向、証拠の状況などを踏まえた、経験豊富な弁護士によるアドバイスが不可欠です。お悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

  • 交通事故について(保険会社に適正な金額を支払わせるために)(2015.1.1)

    先日、自動車で交差点で信号待ちのために停車していたところ、後方から走向してきた自動車に自車を追突され、頚椎捻挫(むちうち)と診断されました。病院には6ヶ月間通院しました。先日、加害者が加入している損害保険会社より、示談金の提示をされたのですが、その金額が妥当な金額であるかどうかがよくわかりません。

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     本件の事故の場合、追突した加害者に対して、治療関係費、休業損害(事故によって仕事を休まざるを得なくなった減収分など)、傷害慰謝料(怪我をして通院などをしたことの慰謝料)を請求することができます。また、頚椎捻挫について後遺症と認定されれば、さらに後遺症慰謝料(後遺症を受けたことの慰謝料)や後遺症逸失利益(後遺症によって仕事に支障が出るなどの場合に、後遺症がなければ労働により得られたであろう収入)の請求をすることができます。
     自動車の運転者には、いわゆる「自賠責保険」への加入が法律上義務づけられていますが、この自賠責保険では、傷害の場合は120万円、死亡の場合は3000万円、後遺障害については75万円~4000万円の範囲内でしか賠償金は支払われません。そこで、多くの自動車運転者は、自賠責保険ではカバーされない部分を補うために「任意保険」に加入しています。
     しかし、保険会社が提示する金額は、保険会社内部の基準に基づいて算定されており、裁判所で認められる金額よりもかなり低額な場合が多いです。しかも、そのことを知らずに、保険会社の基準による低い金額での示談に応じてしまっているというケースも少なくありません。
     このような場合、弁護士に相談すれば、果たして保険会社が提示している金額が、裁判で認められる金額などに照らして妥当かどうか(不当に低い金額でないかどうか)を判断することができます。
     ですので、保険会社からの提示があった場合、是非1度弁護士にご相談されることをお勧めします。

  • 自動車事故弁護士費用特約付の保険について教えて下さい。

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     最近、保険に自動車事故弁護士費用特約が付けられている商品が多くみられます。これは、自動車事故により生命又は身体を害されたり、財物に損害を受け、弁護士への法律相談費用や、損害賠償請求に関する弁護士費用を負担した場合に、一定額を限度としてそれらの弁護士費用が保険会社から支払われるという特約です。
     特に、本件のように一方的に追突されたという事故では、こちら側には過失がないので、保険会社の示談代行制度を使うことができません。しかし、この弁護士費用特約があれば、弁護士を代理人として加害者側と示談交渉や裁判をすることができます。
     また、先に述べたとおり、保険会社の提示する金額は一般に裁判で認められる金額より低額であることが多いです。そこで、この弁護士費用特約を使って、交渉段階から弁護士に依頼すれば、事案にもよりますが、適正な金額による示談の可能性も高まります。
     また、交渉で話がまとまらない場合には、裁判を起こすという方法がありますが、この裁判も、交通事故の裁判実務に精通した弁護士に依頼した方が有利になることが多いものと考えられます。ですから、ご自身の保険にこの弁護士費用特約があるかどうかを確認し、特約がある場合には是非ご活用されることをお勧めします。 

  • 遺産分割~自分の他に、付き合いのない法定相続人がいたら?(2014.8.1)

    私の夫が昨年なくなりました。私には子どもが二人いますが、すでに独立しているので、子ども達は、遺産はすべて私が相続すれば良いと言ってくれました。 夫の遺産は、自宅不動産だけで、預貯金はほとんどなく、生前に引き出してお葬式に使ってしまいました。自宅も一人では広すぎますし、古い建物で、管理も大変なので、売却してマンションに買い換えようと思いました。不動産屋さんに相談したところ、思いの他早く買い取り希望の方を探してくれ、マンションも条件が合いそうな物件が見つかりました。ところが、売却手続きを進めると、夫に別の先妻との間のお子さんが、いることがわかりました。今までは一切直接の交流はありません。どうなるのでしょうか。

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     先妻の子も、法定相続人ですので、あなたのお子さんと同じ割合で、法定相続分があります。遺産分割協議をして、その方も含めた法定相続人全員の署名捺印がないと、自宅を売却することはできません。

  • 直接お手紙を出してみましたが、なかなかお返事がありません。

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     生前に交流がないと、なかなかご連絡が取りにくかったり、こちらの都合だけで急いでことを運ぼうとすると、感情的に協議が難しくなったりします。弁護士があなたの代理人になり、事情を説明し、順序立てて、交渉していくことはできると思いますので、一度当事務所にご相談下さい。例えば、不動産をこちらが相続し、売買代金から、その方に法定相続分相当の代償金をお支払いすることで、スムーズに売却できるように協力してもらう、といった内容の交渉をお手伝いすることもできると思います。 先妻の子も、法定相続人ですので、あなたのお子さんと同じ割合で、法定相続分があります。遺産分割協議をして、その方も含めた法定相続人全員の署名捺印がないと、自宅を売却することはできません。

  • 裁量労働制だと残業代はもらえない?(2014.1.1)

    コンピューターのデータ処理をする会社に勤めて、データ処理の仕事をしています。毎月の残業が70時間くらいになるのですが、上司からは「君は裁量労働制だから残業代はつかない」と言われました。入社した時の契約書には確かにそのようなことが書いてあります。あきらめなくてはならないのですか。

    回答:弁護士 原 希世巳弁護士原希世巳写真

     裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある労働者については、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。従って例えばみなし労働時間を(所定労働時間と同じ)週40時間と労使が合意しているような場合、週50時間働いても40時間働いたものとみなされ、残業代は発生しません(但し深夜割増や休日割増は発生します)。逆に週35時間しか働かなくても40時間働いたものとみなされますが、そんなケースはあまり聞いたことありません。

     一般的な仕事の進め方のイメージとしては、会社は社員に仕事の内容を説明し期限を指定します。社員は自分で納期までのスケジュールを決め、自由に時間を使って労働します。会社は途中経過を報告させ、仕事が順調に進んでいるかどうかを確認することはできますが、時間配分など仕事の進め方について指示することはできません。

     ところが、裁量労働といっても名ばかりで、会社から業務について細かく指示されて仕事をしている場合や、通常では考えられないような仕事量を与えられて、毎日社員は仕事づけになっているような場合もよくあります。このような場合、裁量労働制の合意は無効だとして残業代の請求はできることになります。

     またこのように不払い残業を横行させる危険があるので、裁量労働制が認められる業務については厚生労働省令により、19の業務に規制されています。あなたの場合、それらの内の「情報処理システムの分析又は設計の業務」に該当する可能性がありますが、その具体的な内容は、①顧客ニーズや業務の分析等による最適なシステムや機種の決定、②入出力・処理手順などの最適なアプリケーションシステムや最適なソフトウェアの決定、③システム稼働後の評価・改善、など相当に高度な知識、技量を用いて裁量的な判断が必要なものに限られます。

     あなたの業務がこのような内容の業務であるのかどうかが問題です。単に会社からの指示に従ってデータの処理をしているだけであるとすると、これには該当しません。その場合も残業代は請求できることになります。

  • 改正労働者派遣法について(2013.1.1)

    私は、前の会社を解雇されて以来、正社員としてなかなか採用してもらえず、今は派遣会社に登録し、いくつかの派遣先を転々とし、今は電機メーカーの工場に派遣されています。この工場では1年以上派遣されていますが、いつまた契約が更新されず、職を失ってしまうのではないかと、とても不安です。最近、労働者派遣法が改正されたと聞きましたが、その改正によって、このような私の不安定な生活が改善されるようなことはあるのでしょうか。

    回答:弁護士 髙橋 右京弁護士髙橋右京写真

     2012年3月28日、労働者派遣法の改正法が成立し、同年10月1日より施行されました。もともとの政府案では、不安定雇用の大きな原因といえる、登録型派遣業や製造業への派遣を原則禁止するという規定がありましたが、与野党3党合意により、この規定は削除されてしまいました。また究極の不安定雇用ともいえる日雇派遣についても、3党合意により、禁止される範囲が雇用期間2ヶ月以内の日雇派遣から雇用期間30日以内の日雇派遣にまで縮小されてしまいました。これらの点で、改正法は、労働者の保護の観点からとても不十分なものになってしまいました。

     あなたの場合、製造業への派遣ですが、今回の改正ではこのような派遣も許されるということになってしまいました。

     改正法では、不十分とはいえ、労働者保護のための以下のような規定も設けられました。
    ①派遣会社に、マージン率等の公表が義務づけられた。
    ②派遣会社に、派遣先正社員との均等待遇に配慮すべき義務が課せられた。
    ③派遣会社に、雇用期間が通算1年以上の派遣労働者に対する、無期雇用への転換の機会の提供や紹介予定派遣の対象とするなどの措置をとるよう努力すべき義務が課せられた。
    ④離職後1年以内に、派遣労働者として元の派遣先に派遣することが原則禁止された。

     あなたの場合、同じ派遣先で同じ業務に1年以上従事していますから、もともと旧法下でも、派遣先に対して直接雇用するよう要求できた可能性があります(改正法40条の3)。しかし、改正法の下ではさらに、派遣会社に対しても、上記③のとおり、無期雇用への転換の機会の提供や、派遣先に対する直接雇用のあっせんを予定して行われる紹介予定派遣の対象とすることなどを、要求することができる可能性があります(改正法30条)。

     派遣労働者の皆さんは、このような派遣法の規定を知らず、損をしていることも多々あるのではないかと思います。もし少しでも疑問に思われたことがあれば、ぜひ気軽に、弁護士にご相談ください。

  • 更新料特約は有効か!?(2012.1.1)

    私は、自宅アパートを2年間の契約期間で借りています。大家さんとの間の賃貸借契約には、この契約期間が満了して賃貸借契約を更新する場合には、賃料の2ヶ月分を更新料として支払うという文言が記載されています。このような更新料を支払う旨の約束は法的に有効なのでしょうか? また、この約束が有効であるとして、私がこの約束に反して更新料を支払わなかった場合、直ちにアパートを出ていかなければいけないのでしょうか。

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     更新料とは、一般に、土地、建物の賃貸借契約が更新される際に、家賃とは別に更新の対価として大家さんに支払われる金銭のことを言います。アパートやマンションなどを借りる際、賃貸借契約書には通常契約期間が定められており、契約期間が満了して契約を更新する場合には、大家さんに更新料を支払う旨の特約が規定されていることが多いです。このような更新料を支払う旨の特約は法的に有効と言えるでしょうか。

     近時、いくつかの地方裁判所や高等裁判所で、この更新料の特約が消費者契約法10条に違反して無効であるという判決が出されていました。消費者契約法10条は、「民法、商法(…)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」と規定されています。

     たとえば、京都地裁平成21年7月23日判決は、賃貸借契約締結時に更新料条項の趣旨を大家が具体的かつ明確に説明しなかったことなどを理由に、また大阪高裁平成21年8月27日判決は、1年ごとの更新料が家賃の2ヶ月分余りであるという事案で、更新料が高額であるということなどを理由に、更新料特約は消費者契約法10条に違反して無効であるとしていました。その一方で、更新料特約は法的に有効であるとした高裁判決もあり、最高裁判決の結論が待たれていました。

     しかし、最高裁平成23年7月15日判決は、更新料条項は、額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間などに照らし、高額すぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと判示しました。

     したがって、この最高裁判例によれば、賃貸借契約期間が2年間で、更新料が家賃の2ヶ月分という更新料特約は、特段の事情がない限り法的に有効ということになります。

     ただし、更新料特約に違反して更新料を支払わなかったとしても、大家さんが賃貸借契約を解除するためには、信頼関係を破壊する特段の事情が必要ですし、更新拒絶をする場合には借地借家法に規定された「正当事由」の存在が必要です。ですから、この更新料不払いが、信頼関係を破壊する特段の事情や「正当事由」に当たると認められなければ契約の解除や更新拒絶は認められません。

     微妙な判断にはなりますが、様々な事情で更新料を支払うことができないという場合、一般的には直ちにアパートを出ていかなければならないということにはなりません。このような場合は遠慮なく弁護士にご相談下さい。

  • DV(ドメスティック バイオレンス)勇気を出して相談を!(2011.8.1)

    1才の子どもがいる主婦です。夫の暴力がひどく、このままではとても耐えられず、家を出ようかと考えています。ただ、身寄りがなく、子どもが小さいためすぐに子どもを預けて働きに出るのも難しいので、とても困っています。

    回答:弁護士 千葉 恵子弁護士千葉恵子写真

     とても、大変な目に合っているのですね。お子さんもまだまだ小さく大変ですね。
     まず、暴力について警察や配偶者暴力相談支援センター、自治体のDV相談窓口に相談してみましょう。内閣府男女共同参画局が設置する全国共通ダイヤル(0570-0-55210)に電話をすると、最寄りの相談窓口の連絡先を教えてもらえます。
     すぐに解決する訳ではありませんが、悩み事を相談できるだけでも気持ちが軽くなることがありますし、調停、訴訟で相談したことが有利な材料になることもあります。

  • 相談しても、住む場所や生活費がないと家を出られませんよね。

    回答:弁護士 千葉 恵子弁護士千葉恵子写真

     相談すると、暴力があるとの事であれば、一時避難所に入所が可能になったり、一時避難所に避難してその間に生活保護を受給することも可能です。

  • 婚姻費用分担請求というものがあると聞いたのですが、自分から家を出てももらえますか。

    回答:弁護士 千葉 恵子弁護士千葉恵子写真

     夫婦には、一般に同居義務がありますが、正当な事由があれば別居は可能です。暴力により同居が困難な場合は、それにあたります。その場合、婚姻費用を請求できます。婚姻費用はその資産、収入、社会的な地位に応じた通常の社会生活維持するために必要な費用で夫婦で分担するものです(民法760条)。

     双方の話し合いで支払って貰えればそれでもいいですし、家庭裁判所に調停を申し立てて調停で話し合って決めることも可能です。額は、双方の収入、お子さんがいる場合はその数、お子さんの年齢を考慮して作成された算定表があり、それで算出される大体の金額を基本にして話し合います。
     調停で話し合いがつかないときは審判に移行し、裁判所に決めて貰うことが出来ます。
     審判の場合には、算定表に従い、申立時からの支払を命じることが多いです。
     審判で支払が命じられたにも拘わらず、婚姻費用を支払って貰えないときには、相手の給料の差押えをすることができます。
     差押えは通常の場合は、給料の4分の1までが限度となっていますが、婚姻費用の場合には2分の1まで差押えが可能です。

     これは逆に言えば、それまでの不払いの期間が長ければ長いほど差押えで支払義務者の生活を厳しいものにする可能性もあります。支払う側はその事も考慮した方がいいでしょう。
     なお、婚姻費用の調停、離婚の調停は、住所を明らかにすると相手が自宅にやってきて暴力を振るわれるなどの恐れがある場合には、現在の住所を相手に明らかにしなくても可能ですし、裁判所は調停の際に相手に会わないように配慮してくれます。気軽に弁護士にもご相談下さい。

  • がんばれ イクメン(2011.1.1)

    最近「イクメンのすすめ」という話しをよく聞きます。「育児に積極的に取り組む男性」のことを言うらしいです。僕も、せっかく子供が生まれるのだから、妻任せにしないで育児にチャレンジしたいのです。
    でもうちの会社は妻が専業主婦の場合には、育児休業がとれないという労使協定があるのです。やはり育児休業を取るのは無理なのでしょうか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     子供の育児に父親も母親も共に責任をもって、参加するのは素晴らしいことです。最近は男性も「妻の手伝い」ではなく、主体的に育児を担いたいとして、育児をライフスタイルの中心にすえて生活する人たちが増えています。子供は3歳までに一生分の親孝行をする、と言われるほど、幼い子供の成長は親に日々素晴らしい感動と喜びを与えてくれます。男性であっても妻が専業主婦であっても、育児を担いたいという思いに変わりはないはずです。

     育児介護休業法では男性も女性も共に家族的責任を負うという前提のもとで、男女がともに、育児休業をとることができます。1981年に制定された法律ですが、その後何回も改正を重ねてきました。まだまだ男性の取得率は女性に比べて低いですが、2009 年7月にも改正されて、働くパパが育児休業を取りやすくなりました。その結果、あなたの会社のように、労使協定で専業主婦(夫)の配偶者を除外するという制度を廃止しました。このような労使協定があっても、これを理由に拒否することはできません。あなたは育児休業をとることができます。積極的に申し出て、赤ちゃんとの貴重な時間を大切にお過ごし下さい。

  • 成年後見制度(2010.8.1)

    テレビや新聞で認知症などで判断能力が低下した高齢者が悪徳商法などの被害にあっていることを見聞きしますが、このような被害を防ぐための制度はないのでしょうか?

    回答:弁護士 森 孝博弁護士森孝博写真

     精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、契約などの法律行為を適切に行うための判断能力が失われている、もしくは不十分な状況にある場合、本人だけで契約などを行うと、ご質問のように本人に不利な結果をもたらすことがあります。そこで、そのような人を保護・支援するために、家庭裁判所が援助者を選び、援助者が本人のために活動する「成年後見制度」という制度があります。

     具体的には、この援助者が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自ら法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消すことによって、本人を保護・支援します。

  • 成年後見制度にはどのようなものがあるのでしょうか?

    回答:弁護士 森 孝博弁護士森孝博写真

     成年後見制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」という2つの制度があります。

     まず、「法定後見制度」とは、家庭裁判所が本人の判断能力の低下の程度に応じて後見人、保佐人、補助人と呼ばれる援助者をつける制度です。「後見」というのは本人の判断能力が全くない状態のことで、「保佐」というのは本人の判断能力が失われていないものの、著しく不十分な状態であり、自己の財産を管理・処分するにあたって、常に援助が必要な状態のことで、「補助」は、本人の判断能力が不十分な状態で、自己の財産管理・処分に援助が必要な場合のことです。本人の判断能力が低下した時に、本人ないし近親者等の一定の申立権者が、家庭裁判所に後見・保佐・補助開始の審判を申し立て、家庭裁判所が後見・保佐・補助開始の審判をすると、後見人・保佐人・補助人が選任され、本人のために財産管理などの援助をします。

     次に、「任意後見制度」とは、本人の判断能力が十分あるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人と呼ばれます。)に財産管理などに関する事務についての代理権を与える契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくものです。そうすることで、本人の判断能力が低下した段階で任意後見人が上記契約で決めた事項について本人の援助を開始することになります。また、任意後見開始の段階で、家庭裁判所が任意後見監督人と呼ばれる監督者を選任し、事務処理の適正さが担保されるようになっています。前述の法定後見制度と比較すると、本人が任意後見人を自ら選ぶことができ、さらに援助の内容も自ら決めることができるという点に特徴があります。

     以上のとおり、現在、本人の意思や判断能力の程度に応じて多様な制度が整備されていますので、制度の活用にご関心がある方はぜひご相談下さい。

  • そうだ、生活保護を受けよう!(2009.8.1)

     昨今の金融不況の最中、生活自体がたち行かないというご相談をよく受けます。私自身、今年に入ってから生活保護申請事件が非常に増えています。そこで、今回は、生活保護に関する典型的な質問にお答えします。

  • 生活保護はどういう場合に利用できますか?

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     憲法25条では生存権が保障され、それを受けた生活保護法1条で、国がすべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障し、困窮の程度に応じて必要な保護を行うとしています。したがって、この「最低限度の生活」を下回る生活を余儀なくされている人、言い換えれば「最低生活費」を下回る収入しかない人は、原則として皆生活保護を利用できます。

     たとえば、東京都の1級地-1の地域(たとえば世田谷区や目黒区)の場合、単身者の最低生活費は、住宅扶助費は上限5万3700円の実額、生活扶助費は約8万円ですから、概ね13万円以下の収入しかない人は差額について生活保護費の支給を受けることができます。

  • 借金があると生活保護は受けられないのですか?

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     結論から言うと、借金があるから生活保護を受けられないということはありません。ただし、本来、保護費はあくまで最低生活の維持のために使うものであり、保護費を借金の返済に充てることはできません。ですから、借金がある場合は、弁護士に依頼して自己破産等の手続で借金を整理することを検討すべきです。逆に言えば、「弁護士に依頼して借金を法的に整理する予定である」ということを説明できれば、福祉事務所側も安心して保護を開始することができます。

  • 持ち家に住みながら生活保護を受けることは可能ですか?

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     自己所有の土地・家屋に居住していることを理由に生活保護を断られることはあってはなりません。むしろ、厚労省の通知によれば、「処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合」を除き、原則として世帯の用に供されている不動産は保有を認めることとされています。ただし、平成19年度より、持ち家に居住している世帯で世帯構成員の中に満65歳以上の方がおられる場合(当該世帯構成員の配偶者が満65歳未満である場合を除く)には、生活保護を利用する前にまず各都道府県社会福祉協議会の行う「要保護世帯向け長期生活支援資金」の貸付けを受けることが条件となりました。

     この制度は、一定の貸付限度額に至るまで毎月決まった額の融資を受け、限度額に達した段階で貸付けがストップされるという制度です。債務を担保するために不動産に抵当権が設定され、原則として本人死亡時にまとめて償還がなされます。この制度はリバースモーゲージと呼ばれています。

  • 住所がない場合には生活保護は受けられないのですか?

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     よくこのように誤解している人がいますが、住所がなければ生活保護が受けられないなどというのは全くのでたらめです。生活保護法は住居を有しない人を保護の対象者として予定しています(法19条2項2号)。住居のない人に対する保護を「現在地保護」と言い、その人が現在いる場所を所管する福祉事務所が管轄の実施機関となります(法19条1項2号)。したがって、いわゆる野宿生活者などが福祉事務所に相談に来た場合には、今現在福祉事務所にいることから、福祉事務所の所在地を「現在地」として保護を開始しなければなりません。さらに、厚労省の実施要領によると、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者(保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る)が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合」には敷金等の支給を認めても差し支えないとされています(局長通知第7の4(1)キ)。したがって、敷金等のアパートへの転居費用も生活保護費から支給されることになります。

  • 生活保護の申請を弁護士に頼むことはできますか?
    また、弁護士に頼んだ場合、費用はどうなりますか?

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     単独で福祉事務所に生活保護の申請に行っても、いわゆる「水際作戦」と言って、保護受給率を下げるために窓口で相談者を追い返すという違法な対応をする職員もいます。ですから、生活保護の申請も弁護士に依頼する方が確実です。また、弁護士費用の点ですが、現在は、日本弁護士連合会が日本司法支援センター(法テラス)に委託して実施する「自主事業」の一つとして、生活保護申請に関する援助事業が行われています。したがって、生活保護に関しては、法律相談及び生活保護申請について、一定の要件を満たせば弁護士費用は法テラスから支給され、ご本人が弁護士費用を負担することはありません。当事務所にもお気軽にご相談下さい。

  • インターネット上の名誉毀損(2009.1.1)

    インターネットを見ていたら、とある掲示板で、私の実名をあげて、全く身に覚えのないことを書き連ね、私のことを侮辱するような書き込みを発見しました。誰が書き込んだのがはわかりませんが、ネット上で私に関する嘘の噂が広まるのは耐えられません。どうしたらよいでしょうか。

    回答:弁護士 髙橋 右京弁護士髙橋右京写真

     インターネット上の名誉毀損の場合でも、採りうる法的手段は、基本的には通常の名誉毀損の場合と同じです。つまり、名誉毀損表現をした本人に対し、その表現をやめるように請求し、やめない場合はその表現の差止や、場合によっては名誉毀損を理由に損害賠償を請求していくことになります。
     ただし、インターネット上の名誉毀損表現の最大の特徴は、その匿名性です。つまり、このような書き込みをする人(発信者)は、本名を名乗ることはほとんどなく、通常「ハンドルネーム」というあだ名のようなものを使います。そのため、加害者を特定することができないのです。

     そこで、掲示板の管理人やプロバイダーに対し、発信者が誰であるか、情報を開示するよう請求するという方法が考えられます。2002年から施行されたいわゆる「プロバイダー責任制限法」は、4条1項で、一定の要件のもと、プロバイダーや管理人が発信者の情報を開示しなければならないと定めています。この法律を根拠に、管理人などに、当該書き込みをしたのが誰であるのか教えるように請求することができるのです。その上で、発信者に対し削除の要求や損害賠償請求をすることになります。

     ただし、発信者に対する請求は、このようにプロバイダー等に対する開示請求を経なければならず時間も手間もかかります。そこで、もう一つの方法として、プロバイダーや掲示板の管理人等に対し書き込みの削除や損害賠償を請求する方法があります。
     プロバイダー責任制限法は3条1項で、プロバイダーや管理人は「他人の権利が侵害されていることを知ったとき」または「知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」にしか 損害賠償責任を負わないと定めています。逆に言えば、そのような場合に該当するのであれば、プロバイターや管理人に対する損害賠償請求が認められる場合があるとしているのです。

     また、幾つかの下級審判例では、掲示板上で名誉毀損表現が書き込まれた場合、一定の場合に掲示板の管理人にその書き込みの削除義務が生ずることを認めています。したがって、これらの判例を根拠に、プロバイダー等に記事の削除を請求するという方法を採ることもできます。
     以上の各請求ついて、もちろん裁判に訴えることもできますが、プロバイダー等との交渉で解決する場合も少なくありません。最良の解決策は、事件によって、相手方によって異なります。是非、弁護士に相談されることをお勧めします。

  • 危急時遺言について(2008.1.1)

    私には弟がいますが、今、病院で危篤状態です。弟は結婚しておらず、子どもはなく両親もすでに他界しています。他に兄弟が2人います。弟には土地位しか財産はありません。弟は私が弟の面倒を看ていたことから「土地は姉さんに相続させる。」と常に言っていました。 しかし、弟は突然救急車で運ばれて病院に入院してしまい、生死をさまよう状態です。遺言書は作成していません。弟は何とか話しはできますが、記述したり、署名することまではできそうもありません。どうしたらいいでしょうか。

    回答:弁護士 千葉 恵子弁護士千葉恵子写真

     そのような緊急時のために、遺言の特別方式として危急時遺言というものがあります(民法976条)。以下のような条件を満たせば遺言が成立します。
     ①遺言者が疾病その他の事由で死亡の危急に迫られていること
     ②証人3人以上の立会があること
     ③証人の1人に対して遺言者が遺言の趣旨を口授すること
     ④口授を受けた証人はこの口授を筆記すること
     ⑤遺言者と他の2人の証人に対して筆記を読み聞かせるか閲覧させること
     ⑥各証人が筆記が正確なことを承認した後に署名、押印すること。

     さらに、危急時遺言は必ず遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求をして確認を得なければ効力が生じません。さらに裁判所が確認をするためには遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければなりません。なお、遺言者が回復して普通方式によって遺言をなしうるようになってからさらに6ヶ月生存したときは、危急時遺言は失効します(民法983条)。
     このように緊急の場合には、口頭での遺言が認められています。ただ、危急時遺言は緊急時のものであることから、方式の欠如などを理由に有効無効が争われることが多いため、自分の意思を確実に実現させるためには、公正証書遺言を作成しておいた方が望ましいと言えます。遺言作成等について疑問等あればご相談下さい。

  • マンション管理の問題(2007.8.1)

    私は築4年のマンションに住んでいますが、管理費を4年間ずっと滞納している区分所有者がいます。また、最近、庶民増税のせいか、新たに滞納するようになった区分所有者も数名います。 マンションの管理組合としては、どのように対処したらよいでしょうか。

    回答:弁護士 萩尾 健太弁護士萩尾健太写真

     どうしても払わないなら、裁判を起こす必要があると思います。区分所有法47条8項には「管理組合法人は、規約または集会の決議により、その事務に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができる」とあります。管理費を長期滞納する人から取り立てるのはなかなか大変ですが、判決を得れば差押などもできます。ところで、あなたのマンションの規約には、どのように記載されていますか。

  • 今の規約では、訴訟は集会の普通決議によるとなっていますが、いちいち普通決議が必要だと大変なのですが。

    回答:弁護士 萩尾 健太弁護士萩尾健太写真

     マンション管理組合の集会などは、民主主義によってマンションを運営するためのものなので大事なのです。ただ、未納の管理費を回収するには5年の時効があるので、機敏な対応が必要です。国土交通省が公表している標準管理規約60条3項では次のように定めています。「理事長は、未納の管理費等及び使用の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる」。そこで、長期滞納者の件だけでなく、今後のことも考えれば、規約改定も検討してもよいと思います。法的な手続きを取る時は、総会の普通決議ではなく、理事会の決議ですぐにできるようにする、との改定するのです。
     もっとも、規約変更は、必ず集会の特別決議によらなければならならず、簡単ではありません。集会の決議には、普通決議と特別決議があります。普通決議は区分所有者および議決権の過半数による決議であり、特別決議は4分の3以上の決議です。 そうした厳格な手続きを条件に、理事会の決議で訴訟を遂行できるようにするのです。そもそも、特別決議をするには、多くの区分所有者で議論をして集会への参加を求める必要があります。そうした議論をする中で、各区分所有者の意識も高まり、管理費を滞納する人もいなくなったりしますよ。その過程が大事だと思います。

     ただし、管理組合の理事は持ち回りであることが多く、理事会の決議で簡単に裁判を起こせるようにしてしまうと、心配な点もあります。訴訟が起こせる対象を、管理費等の未納分徴収など迅速性を要する事項に限定することも検討するとよいでしょう。

  • クーリングオフって何?(2006.1.1)

    自宅に来た訪問販売員にしつこく勧誘されて、化粧品を買わされてしまいました。一旦は一応納得して契約しましたが、後でよく考えると、必要のない物を強引に買わされたので、納得がいきません。このような契約を解消する何か良い方法はありますか。

    回答:弁護士 吉田 悌一郎弁護士吉田悌一郎写真

     このような場合には、クーリング・オフという制度によって契約を解除することが考えられます。クーリング・オフというのは、消費者が契約の締結等をした場合でも、一定期間に限って消費者に熟慮する期間を与え、その期間内に必要がないと判断した場合には、消費者から一方的に契約の解除をすることができるという制度です。「クーリング・オフ」とは、文字通り「頭を冷やして考え直す」機会を与えたものです。
     ただし、このクーリング・オフ制度は、法律で定められた一定の取引に限定されており、例えば、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、海外先物取引などがその典型です。また、このクーリング・オフを利用できる期間は、訪問販売で8日間、連鎖販売取引で20日間というように、それぞれ短期の期間に限られています。

     本問では、訪問販売の事例ですから、契約の内容を明らかにした書面(契約書の控えなど)を業者が交付した日から起算して8日以内に行使しなければなりません。ただ、8日以内にクーリング・オフの通知を発信すればよく(つまり、クーリング・オフ期間最終日の消印で通知書を送付すればよい)、その通知が8日以内に事業者に到達することまでは必要ありません。また、行使方法としては、口頭でもかまいませんが、クーリング・オフの事実を証明するための重要な証拠となるので、内容証明や配達証明付の文書で行うべきです。

     クーリング・オフを行うと、事業者の同意などは必要なく、当然に、一方的に契約は最初に遡って無条件で解除されます。よって、既に支払った代金は返還請求できますし、商品が引き渡されている場合には、事業者の費用負担で引き取るように要求することができます。

  • 交通事故を起こしてしまったら(2005.8.1)

    昨日、仕事で自動車を運転中、交差点で接触事故を起こしてしまいました。青信号に従って右折しようとしたところ、前方から直進してきたバイクに気づかず、あわててブレーキを踏んだのですがぶつかってしまいました。反対車線にも右折車が止まっていて、その影からバイクが高速度で飛び出してきたので、直前までよく見えなかったのです。 損害賠償については、私にはどの程度の責任が生じるのでしょうか。

    回答:弁護士 米倉 勉弁護士米倉勉写真

     直進車両が優先されますから、基本的には右折車側に過失があるということになります。とはいえ、交差点では直進車にも状況に応じた注意義務がありますから、バイクにもある程度の過失割合が認められるのが通常です。一般的には、直進バイクには基本的に15%程度の過失があると解されているようですが、これは基本的な過失割合であり、実際の過失割合は事故時の状況に応じて加減して判断されます。本件では、バイクは右折車両の影から高速で進入してきたとのことですが、その際の速度超過の程度等を勘案して過失の程度を考えることになるでしょう。

  • バイクの方は、幸い大きな怪我はなさそうなのですが、頸のあたりが変だと言っています。病院に行ってくださいとお願いしましたが、今後、どのようなことになるのでしょうか。

    回答:弁護士 米倉 勉弁護士米倉勉写真

     まず当然のことですが、事故を起こした場合はすぐに警察に事故の届けをして下さい。運転者の義務ですし、今後賠償保険の適用に際しても、事故の届出がなされていることが必要になります。その上で、相手の怪我の状況に応じて、生じた被害を、前述の過失割合に応じて弁償することになります。現実には治療が済まないことには、治療費も慰謝料も確定しませんから、きちんと治療してもらい、怪我が治った時点で示談を整えた上で支払うことが通常です。
     任意保険に加入しているのが通常ですが、その場合は保険会社に届けて下さい。示談交渉も保険会社が代理人として行う約定になっていることが多いと思います。相手の方が怪我をしたかもしれないということなら、被害者から診断書や休業損害の証明書等、被害を証明する資料を提出してもらい、被害の状況や損害額を確かめて、あなたの責任の範囲を確定することになります。

     なお、被害者には自賠責保険の被害者請求の制度もありますので、こうした制度を使ってもらうことも可能です。

  • 離婚について(2005.1.1)

    結婚して10年が経ち小学生の子どもがいます。夫に交際している女性がいることがわかったので、離婚することを考えています。離婚するにはどうすればよいのでしょうか。 また、夫に金銭的な要求をすることができますか。

    回答:弁護士 小林 容子弁護士小林容子写真

     まず、一番多い方法が、夫婦で話し合って離婚を決め、離婚届を役所に提出する協議離婚です。未成年の子どもがいる場合は、父母のどちらが親権者になるのか決めなければなりません。また、証人2名の署名押印が必要です。

     話し合いで決まらない場合は、裁判所を利用することになります。その場合は、まず家庭裁判所へ調停を申し立てます。調停を飛び越えて直ぐに裁判を起こすことはできません。調停は男女の調停委員2名が当事者それぞれの言い分を聞きながら解決策を探る手続で、当事者双方が納得して合意することにより成立します。調停が成立しなかった(「不調」となった)場合に、さらに手続を進めたいのであれば家庭裁判所に離婚を請求する裁判を起こすことになります。民法は、離婚が認められる事情を
     ①不貞行為、
     ②悪意の遺棄、
     ③3年以上の生死不明、
     ④その他婚姻を継続し難い重大事由
    と厳密に定めていますが、実際には、裁判の手続中に話し合い(和解)で解決することも多いようです。

     金銭的な請求ですが、あなたがお子さんを引き取って育てるのであれば、養育費を支払ってもらうことができます。金額は、父母の収入や生活状況を踏まえて決めることになります。もらえる期間は、子どもが20歳になるまでとすることが多いですが、18歳とか大学や専門学校を卒業するまでという定め方もあります。養育費の支払約束が調停調書や判決書、和解調書に記載してあれば、支払ってもらえなくなったときに強制執行をすることができます。裁判所を使わずに協議離婚をする場合は、約束を公正証書にして、支払わなければ強制執行をしてもよいという文言を入れておくと良いでしょう。
     また、結婚後夫婦の協力によって得た財産の精算(財産分与)を求めることができます。あなたの場合のように相手側に離婚原因があるときは、慰謝料の請求も可能です。

  • 保証人について(2004.8.1)

    知人に「絶対迷惑をかけないから連帯保証人になって欲しい。はんこを貸してくれれば、手間も取らせない。」と頼まれました。でも、「保証倒れ」という言葉も聞きますし、友人も「離婚した際に、保証人の問題で苦労した」と言っていましたので心配です。 どうすればいいでしょうか?基本的なことを教えてください。

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     連帯保証人になるというのは、自分がお金を借りるのと同じ責任を負うことです。知人から「迷惑をかけない。」といわれても、それは債権者に払わなくて良いと言うことではありません。主債務者である知人が払わなくなったり、破産したりした場合には、あなたが、全額を支払わなければならなくなります。もちろん、あなたが支払った場合、その分を主債務者に求償することはできますが、実際には主債務者に資力がなくて、回収できない場合が多いでしょう。連帯保証人になる場合には、自分が全面的に責任を負う契約だと言うことを覚悟して、契約してください。ですから、もちろん契約書の中味はしっかり自分でチェックすること。「はんこを貸す。」と言う安易な方法を取ると、自分の認識と全く違う内容の契約書が作成されるかもしれません。さらに「公正証書」にされてしまうと、払わなかった場合、あなたの財産が差し押さえられる可能性もあります。くれぐれも慎重にしましょう。

     離婚と保証債務についても問題になることが多いですね。住宅ローンなどの保証人になっているような場合、主債務者である配偶者と離婚しても保証債務は原則として存続します。住宅の持分を主債務者に譲渡しても、当然には保証契約は解除されません。配偶者との間で、離婚の合意として「保証債務の負担をしない」と定めるだけでなく、債権者との間で、正式に保証債務を解除することが必要です。担保物件の持分を失うことで、解除を認める債権者もいますが、新たに、保証人を追加するように求める債権者もいます。事前によく確認しないと、連帯債務だけが、残って思わぬ負担を強いられる可能性もあります。ご注意下さい。

  • 交通事故について(2004.1.1)

    私の友人が先日交通事故にあいました。
    事故にあってしまった場合、事故を起こしてしまった場合どうしたらよいか、基本的なことを教えてください。

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     交通事故は突然のことなので、誰でも動揺して不安がふくらみます。まず、事故をにあったら、必ず、警察に届け出て、事故の状況を説明し、事故証明書を発行してもらってください。怪我をした人は必ず早めに医者に行き、交通事故であることを告げ、診断書をもらうようにしましょう。
     加害者には、負傷者を救護し、他に危険が拡大しないようにする義務があります。加害者が任意保険に入っている場合には、すぐに保険会社に連絡しましょう。「直接交渉はしないで欲しい。」といわれるかもしれませんが、早めにお詫びとお見舞いをすることは必要です。保険会社の担当者と相談しましょう。保険会社任せにしないで、自分の責任だということを忘れないでください。

     負傷した人はまず、治療に専念してください。任意保険の場合いには治療が終わるまでは、治療費や、休業損害など一部の損害だけ暫定的に支払われます。治療にかかった費用や、交通費などは領収書を整理し、記録を残しておくようにしましょう。加害者が自賠責保険にしか入っていない場合には、被害者請求という方法で、治療中の費用の仮払いを受けることができます。自賠責の保険会社に連絡して、手続きをとってください。
     後遺症が残る場合には、主治医がこれ以上治療しても症状の改善が見られないと判断した時点(症状固定時)に「後遺症診断書」を作成してくれます。この症状をもとに、後遺症の等級が決定され、それによって、後遺症慰謝料や、後遺症による逸失利益の損害を請求することになります。

     被害者にも一定の過失があるという場合には、「過失相殺」といって、その割合に応じて、損害を賠償される金額が減じられることになります。 損害額について不明な点があったり、過失割合が納得いかない場合には弁護士にご相談下さい。

     交通事故は民事的に損害賠償責任を問われるだけでなく、刑事においても「業務上過失致死、致傷罪」として責任を問われることになります。「走る凶器」としての車で、他人の生命身体を傷つけ、自分の人生も傷つけてしまうことにならないよう、くれぐれも気をつけてください。

  • 遺産分割について(2003.8.1)

    私が死亡した場合、誰が相続人になるのですか、法定相続分はどれくらいですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     まず配偶者と子どもです。配偶者は法律上届のあるものであり、内縁関係は含みません。子どもは実子養子を問いません。子どもが、被相続人よりも先に亡くなっている場合にはその直系卑属が代襲相続人となります。法定相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1です。
     子どもがいない場合には、配偶者と直系尊属が相続人になります。その場合には、配偶者が3分の2、尊属が3分の1です。
     尊属もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹です。相続分は配偶者が4分の3、兄弟が4分の1です。この場合でも、先に、兄弟姉妹が亡くなっているときは、その卑属が代襲相続することになりますので、甥、姪に相続分があるケースもあります。

  • 遺産分割協議はどうすればよいのですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     相続人全員が遺産の内容を知った上で、具体的な取得財産を決めることになります。
     遺産分割について相続人全員の意思がまとまらないときや、そもそも話し合いができない場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停を起こすことができます。そこでも意見が食い違って、調停を成立できないときには、審判で裁判所が決定することになります。

  • 相続人間で話し合わずに、スムーズに相続する方法はないですか?

    回答:弁護士 淵脇 みどり弁護士淵脇みどり写真

     被相続人が事前に遺言書を作成しておく事は有効です。その場合でも、兄弟姉妹以外の相続人は法定相続分の2分の1について遺留分を主張することができますので、注意してください。 尚、相続問題については、それぞれの事案に特有な問題が含まれることがありますので、ご心配がある場合には早めに弁護士にご相談下さい。

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